舞姫 現代語訳なび:舞姫(現代語訳)情報

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現代語訳 舞姫 筑摩書房

現代語訳 舞姫
現代語訳 舞姫
筑摩書房
price : ¥609
release : 2006/03

端正な井上靖訳と貴重な資料

「舞姫」は「うたかたの記」「文づかひ」とともに、二十代の?外が、自らのドイツ留学体験をもとに書いた、痛切な青春小説である。文語文で語られたその「雅文体」は、たとえようもなく美しいだけでなく、回想に適した文体でもあるので、「現代語訳」には違和感がないわけではない。だが井上靖の訳文(1982年)は、崩れのない端正な現代日本語になっている。たとえば、はじめて恋人エリスに会うところ。「今この処を過ぎんとするとき、鎖(とざ)したる寺門の扉に寄りて、声を呑みつつ泣くひとりの少女(をとめ)あるを見たり。年は十六、十七なるべし。かむりし巾(きれ)を洩れたる髪の色は、薄きこがね色にて、・・・この青く清らにて物問ひたげに愁ひを含める目(まみ)の、半ば露を宿せる長き睫毛に覆はれたるは、何故に一顧したるのみにて、用心深き我が心の底までは徹したるか。」

それがこう訳される。「今この所を通り過ぎようとする時、鎖(とざ)したる寺門の扉にもたれて、声を呑んで泣く一人の少女が居るのを見た。年は十六、十七であろう。被ったマフラーからこぼれている髪の色は薄いこがね色で、・・・この青く清らかで、もの問いたげに愁いを含んでいる目の、半ば涙を宿している長い睫毛に覆われているところなど、どうしてひと眼見ただけで、用心深い私の心の底にまで焼きついてしまったのであるか。」(p23)つまり、原文に近い訳なのだ。原文が付いているので、訳文との日本語の90年の”時差”について色々と考えさせる。関連資料も豊富で、義妹の回想では、?外を追って来日した実在のエリスに森家が慌てた様子が面白い。ベルリンという都市空間から見た前田愛の「舞姫」論や、それを受けた神山伸弘のベルリン考証など、多面的に「舞姫」が鑑賞できる。
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